博物館

友人から連絡があった。

念願の学芸員として博物館に就職が決まったという知らせ。

彼とは高校時代の友人だ。

富山大学の人文学部で学芸員の資格は取ったものの、博物館の空きが無く、就職浪人をしていた。

暇を持て余していた彼はフリーランスで動画を配信し始めた。

膨大な知識を活かし、美術・歴史・科学・生物など広い視野から、世の中のニュースの解説をするといった内容の動画だ。

彼の独特の話し方と、滲みだしている人の良さ、そして何よりわかりやすく面白いので彼の番組は、みるみる間に人気がでてきた。

登録者数は1,000人、2,000人と増幅し、1万人に達したところだった。

 

私はそんな彼の動画制作を手伝っていたので、彼を一番近くで見守っていた。

だから正直博物館に就職が決まったことで、これからという時に動画配信の頻度が下がるのではないかという危惧があった。

正直、学芸員の仕事がどんなものなのか想像がつかなかった。

そこで学芸員について調べることにした。

 

学芸員になるには

学芸員になるためには国家試験に合格しなければならない。

取得方法には学芸員になるための講座を設置している大学に進み単位を取るのが一般的。

その他にも学芸員資格認定試験に合格したり、実務と博物館に関する科目の履修で単位を取得したりすれば学芸員のになることができる。

学芸員になるには | 文化庁

彼が通っていた富山大では人文学部で必要な科目を履修し、学芸員の資格を取得することができる。

学芸員の就職先

一括りに学芸員といっても就職先や専門分野は異なる。

就職先には美術館、博物館だけではなく、水族館や動物園などもあり、活躍をしている学芸員がいる。なぜなら水族館や動物園も法律上では博物館として位置づけられているからだ。

そう考えると学芸員とはさまざまな施設でかつやくしているんだなぁと思えてくる。

ある美術館の学芸員の仕事

美術館の仕事と言えば、あの絵の横に置いた椅子に一日中座っているだけのイメージがある。正直楽そうな仕事だ。

しかしそれは監視員で学芸員の資格が無くてもいい。

では学芸員はといえば、展示の企画を考えたり、実行するためにアーティストと交渉したり、うち合わせをしたりして企画を作り上げていく。

そのための広報や集客、展示物の詳しい説明やセミナーや動画による解説VTRの作成など教育的な業務も合わせておこなう。

1つの企画を実現させるのに8年以上かかることもあり、盛大なイベントになることも多いという。

学芸員の仕事は展示会を設営する体力的な面も、膨大な資料を整理したり作ったりする作業などなど、幾らでもやらなくてはいけないことが出てきてしまうようだ。

学芸員の仕事が合う人とは

学芸員の仕事が本当に好きでないと続かない、人により向き不向きがある仕事だ。

働く場所や環境・キャリアによっても異なりますが、お給料は決して高くなく、初任給は18万~21万円程度。

参考:学芸員の気になる?年収・給料・収入【スタディサプリ 進路】

お給料よりもやりがいや好きなものに携わっていることに価値をおいている人が学芸員の仕事に合っているといいだろう。

感受性が豊かで、こだわりや好奇心が強い人はのめり込める職業だと思う。

彼は動画をつくり続けるのか…

彼が都内の東京学芸大ではなく、わざわざ富山大学を選んだのは富山という土地が自然に囲まれ静かで、穏やかで、勉強に集中することができる環境が整っていたからだ。

在学中に何度か彼を訪れたことがあった。丁度入学し間もなくして行ったとき、一人暮らしは大変そうだったけど、大学周辺の富山大学の学生マンションに住むことで快適そうだった。

次に訪れたのが4年の夏休みだった。そのころまだ就職先が決まらないことに全然焦っていない彼を少しうとましく思ってしまった。なぜなら自分は就活中でイライラ、ヒイヒイしていたからだ。のんびりと構えていられる彼の心の強さを、うらやましく思っていたのかもしれない。

動画の配信はやはり大変である。

彼は準備するのに何日もかけていたし、資料集めやそれをまとめる作業やフリップづくりなどなど膨大な時間をかけていた。

その時間を取ることができなくなるなら、きっと彼は動画をつくらない。手を抜いて妥協して作ることが何よりも嫌いな性格だと知っている。

私は編集作業を手伝っていた。でもほとんどカットするところも、付け足すこともなく、そのまま配信しても大丈夫なクオリティだった。

彼は配信する前に、第三者に見てもらうため私に依頼していただけだった。

 

もう、彼の解説が見られないと思うと残念だけど、いつかまた始めてくれるんじゃないかと期待している。その時はまた自分に編集依頼がくるかは分からないが、彼をいつまでも応援することが自分の喜びになった今、大好きな博物館に就職できたこととても嬉しく思っている。